COVERS / RCサクセション * 1988 Kitty

なんだかんだいって、もう2011年ともお別れ。早すぎです。震災が大きな爪痕を残し、被災した人はもちろんですが、経済の行方から各々の人生観まで影響を及ぼしました。自分も表参道で商談に向か途中、激震が走ったのはよく覚えていて、その後、事の重大さが把握できず動かない電車をあきらめ原宿近辺のBarで時間つぶしをしてたのが昨日のよう。いろんな事がありすぎた1年、今年を象徴するキヨシローの1枚で締めです。RCとしては末期でバンドの一体感には欠けてきていた時期でしたが話題沸騰となったアルバム。というのも収録曲の原発批判が親会社の同意を得られず突如の発売中止を受け、古巣のキティから出るという異例の展開となったから。それが販促効果にもなりバンドで唯一のチャート1位にもなりました。元々キヨシローが原点回帰として企画されたカヴァー集ながら、結果的にはメッセージ色の強い社会派バンドとしての側面が色濃く出た内容に。当時の自分はちょっとRCに興ざめしてたのでレンタルして聴いたくらいでしたが、今、聴きかえすと聴き応えある中身で流石キヨシローです。
楽曲的には、伝説の名カヴァー「イマジン」がラストに収録された作品としても名高いアルバム。普通だったらジョンの大クラシックを取り上げるなど恐れ多くてしないところですが、ココまで感動的に日本語を乗せて歌ったことは賞賛モンでした。間違いなく本作のハイライトで、なぜか最後には82年シングル“窓の外は雪”のフレーズも挿入です。あとは企画モンらしく、サプライズ・ゲストが多いのも楽しいトコロ。バリー・マクガイヤ曲の高石友也版のカヴァー「明日なき世界」はオープニングに相応しいロッキンな出来で、ジョニー・サンダース、金子マリ、三宅伸冶が参加。またディラン「風に吹かれて」は山口富士夫と高井麻巳子が共演するという凄い絵図の曲。大韓航空機爆破事件のキム・ヒョンヒ記者会見まで挿入されたジョニー・リヴァースの「シークレット・エージェント・マン」ではデュエット・パートナーとして何と当時の演歌界の新星、坂本冬実が登場。コレもかなり新鮮でした。そして本作を象徴するのが「ラブ・ミー・テンダー」。放射能はいらねぇ、牛乳が飲みてぇと、20年前に原発問題を歌っていた曲。チェルノブイリと同じレベル7の原発事故がこの日本で起こったっていう信じ難い事実に対し、本作で早くから警鐘を鳴らしていたキヨシローが今年再クローズ・アップされる結果となりました。また東海大地震も予期される中、原子力発電所の危険性を歌った「サマータイム・ブルース」も今から考えると、この時代に歌ったのは凄い事。盟友、泉谷しげるも参戦。他も、桑田圭祐の声も聴ける「バラバラ」や、キヨシローの同級生でもある名優・三浦友和の歌声も聴ける「黒く塗れ!」、ココでも三浦友和が“しこたま貯めて脱税してやる”と唄うのも新鮮だったチャボの「Money」、山下洋輔も参戦し梅津和時のサックスが吠える「サン・トワ・マ・ミー」あたりも痛快な出来。
「だから言ったでしょ、と天国から聴こえてきそうな20年前の作品。来年は皆が平和な年を祈願!」
Imagine
LOVE ME TENDER
サマータイム・ブルース
リュウ