This Is Ann Peebles / Ann Peebles * 1969 Hi

メンフィス産ディープ・ソウルでもレディ・ソウルの筆頭として挙げられるアン・ピーブルズ。言わずとしれたハイ・レーベルを代表するシンガーで、サウンドの熟成と共に放った「I Can't Stand The Rain」といった70年代のヒット作が有名ですが、こちらの初期の作品もなかなかの味わい。一番に聴くべきアルバムは当然70年代諸作ですが、イナタい音で迫るこの1stアルバムは決して無視できません。セント・ルイスで重要プロデューサーであるジーン・ミラー氏に見い出され名門ハイからのデビューとなった時期の初々しい曲。ブルージーさについては彼女の右に出るモノはいないくらい、ハスキーでディープな歌唱は南部の音にピシャリとはまってます。
やはりハイの親分ウィリー・ミッチェルが関わっているであろう作品が、いわゆるハイっぽい匂いがして最高。冒頭に置かれた、ゆったりミディアム「Give Me Some Credit」や、ブルース・ファンク的な「Crazy About You Baby」は後のブレイクを予感させる出来具合い。60年代の香りを強烈に放つベティ・スワンのミディアム曲「Make Me Yours」や、シャッフルの軽快なリズムに乗る激ディープな声の対比がたまらん「Solid Foundation」あたりも聴き応えあり。ジミー・ヒューズの18番「Steal Away」も演ってます。一方、泥臭く迫るジーン・ミラー制作曲は有名曲カヴァーが注目。アレサの「Chain Of Fools」や「Respect」、フォンテラ・バスの「Rescue Me」、ベティ・ラヴェット「My Man, He's A Lovin' Man」なんかは、やや重量感に欠けますが、アイズリーズの「It's Your Thing」なんかのファンキー・テイストは絶妙で実にカッコええです。デビュー・シングルでもあるミッティ・コリアーのカヴァー「Walk Away」はかなりブルージーで個人的には少し苦手ですが、王道サザン・スロウである「Won't You Try Me」なんかは文句無しのグレイトさ。現行CDは本作を改編して翌年出された2nd収録の4曲に、デビュー・シングルのB面であった優秀リズム・ナンバー「I Can't Let You Go」(←コレがまたエエ感じ)が追加されてて完璧な内容。やっぱ出世作で2ndのタイトル・トラックともなった「Part Time Love」や、「I'll Get Along」や「Generation Gap」なんかのリズム・ナンバーはハイ・サウンドらしさも出てきてグッと格が上がった感じ。こっからの躍進がよく理解できるステップ・アップです。
「どんだけブルージーやねんって、ツッコみたいくらいのディープ・ヴォイス。Hiの歌姫といえばコノ人です!」
Won't You Try Me
It's Your Thing
ナルダン珈琲店主
まいどっす