The Singles Volume five 1967-1969 / James Brown * 2007 Hip-O

かれこれ5年以上に渡って出し続けられ、全世界ファンクファンの大歓迎を受けてるJames Brownシングル・コンプリート集。こういうバリバリの叩き上げ実力者で、なおかつ自信満々でハッタリもかませる、細胞までファンクな人は本当にナカナカいません。田中角栄がいない政界の如く、天上界に召されてからの不在感をより痛切に感じる今日この頃。でもこうして、忙しいゆえにとっ散らかしてしまった仕事が再編纂されキッチリ評価されるのはホント素晴らしいこと。前編では、とうとう歴史的傑作“Cold Sweat”まで辿り着きましたが、さらにファンク色強まる60年代後半。この第5集も重要作がジャンジャン登場の2枚組です。
まず登場なのが「I Can't Stand Myself」と「There Was A Time」の超強力シングルでブッ飛びのスタート。前者はこの時期チョコチョコ起用されたナッシュビルの白人グループthe Dappsをバックにした重要ファンクで、珍しくホーン無しの異色作。後者はアポロ・ライヴからのシングル・エディットでコチラもヒット作。数多く残されたインストでは、インチキ臭さがたまらん御大のオルガン(←褒め言葉)をフィーチャーした「The Soul Of J.B.」や「Funky Soul #1」など実に楽しい仕上がり。デュエットでは相方Bobby Byrdとの哀愁味溢れる「You've Got To Change Your Mind」、Vicki Andersonとの「You've Got The Power」などオーソドックスなソウル系も朝めし前で上質仕上げ。そして更に鋭角性を増した重要ファンク「I Got The Feelin'」の登場。コチラはメイシオとかジミー・ノーランのいるレギュラー・バンドとの録音ですがクライヴ・スタブルフィールドのシンコペイトするドラムスも凄まじいカッコよさです。また恐ろしい緊張感で突き進む傑作ファンク「Licking Stick - Licking Stick」ほモノ、ステレオ両ヴァージョン収録でドップリ浸れます。
2枚目は「Say It Loud - I'm Black And I'm Proud」が登場。キング牧師が暗殺され、カリスマでもあったJ.B.がメッセージを送る必要性を感じ送り込んだ曲。でもファンクとしては正直そこそこ。ドラマチックな展開にシビれるスロウ「Goodbye My Love」、ハンク・バラードも作者に名を連ねる68年軽快クリスマス・ナンバー「Santa Claus Goes Straight To The Ghetto」に「Tit For Tat」など様々なスタイルでハイ・レベルな仕事をこなします。インストも順調にリリースで、激クールなファンク「In The Middle」、ピー・ウィー・エリスによるO.C.Smithカヴァー「Little Green Apples」、スイングしまくる「Soul Pride」などは必聴。そして終盤にはいよいよ「Give It Up or Turnit a Loose」初期ヴァージョンが登場。さらにリズムが細分化されファンクとしても前人未開の域に到達。ここらは何回聴いても震えます。最後は火花散るハイ・テンションでMarva Whitneyとデュエットする激烈ファンク「You Got To Have A Job」で締め。
「同時代のファンクでも、ブッチぎりで前を走ってたJ.B. まさに教科書のような名演集」
Licking Stick - Licking Stick
ナルダン珈琲店主
迷うなぁー