Diamond In The Rough / Syl Johnson * 1974 Hi

無条件、手放し大絶賛となってしまうのがHiの70年代全盛期に出たアルバムの数々。自分がソウルって音楽に求めるひとつの理想形があります。筆頭シンガーはアル・グリーンで間違いないのですが、オーティス・クレイ、アン・ピーブルズ等と共にクリーンナップを打ってたのがこのシル・ジョンソン。数年前のカニエ氏への客演でも有名なシリーナ・ジョンソンの親父さんです。もともとソウルの真髄みたいなカッコええ音でしたが、ウータン軍団を筆頭にしたHip-Hop経由時には愛に満ちた再加工で更なる輝きも追加されてました。まさに素晴らしき二世代訴求が理想的な形で具現化されたのがHi関連の音。小生もまずHiの音をストレートで味わって、数年後にRZA等のサンプリングHi音源も美味しく味わうみたいな“ひつまぶし”的な楽しみ方を幾度となく体感させてもらいました。しかし、この味わい方ができるのは素材の良さがあってのこと。元の音源の劇的な素晴らしさは何年経っても色褪せることはありません。
冒頭からストリングス&曇ったビートのHi王道コンビネーションがいきなりバシッと決まる「Let Yourself Go」で喜びがこみ上げます。続いてWu軍団インスペクター・デックの1stでも印象的なサンプリングをされた「Don't Do It」が登場。チャールズ・ホッジズのオルガンも要所を押さえます。そして軽快アップも絶好調で、シル親父のHi期では一番のゴキゲン歌唱といえる「I Want To Take You Home」あたりは必聴。同趣向の「Stuck In Chicago」もクオリティ抜群でせまってくれます。また、今や一番に本作の目玉的逸品に昇格した感があるのが「Could I Be Falling In Love」。ココでの耽美なサウンドが効果的にレイクォン・ザ・シェフの“Heaven & Hell”→ジョイ・デナラーニ“Heaven Or Hell”と90年代から00年代のHip Hopにて一粒で3度も美味しい使われ方(←マジで何れも最高)がなされマジで黒音ファンの興奮を誘った名スロウです。タイトル曲「Diamond In The Rough」や「Keeping Down Confusion」あたりはハイらしい重たい音が全開で迫るブルージーなナンバー。あ~気持ちええ。こんな曇った音が何でエエのか分かりませんが、確実にツボをついてくれます。後半戦も、シルの悲しい歌声と女声コーラス織り成しも素晴らしいスロウ「Please,Don't Give Up On Me」、重心の低いハイ独特のアップ「Music To My Ears」、サントラGhost DogでのRZAの引用も見事だった「I Hear The Love Chimes」と抜かりなし展開。監督ウィリー・ミッチェルも流石です。
「よく聴くとトム・ジョンストンの声とも似てるシル親父。ウータン・ファンのみならずドゥービーBrosファンも必聴!?」
Could I Be Falling In Love
"I want to take you home (to see mama)"
まいどっす
ナルダン珈琲店主