The Way I See It / Raphael Saadiq * 2008 Columbia

タイム・スリップしたんかいなと錯覚するラファエル師匠の久々となる新作。知らん人が見たら'60sソウルのリイシュー盤か?ってくらいレトロ感覚に拘った作品です。1曲目「Sure Hope You Mean It」から肌触りは黄金のデトロイト・モータウンのヒッツヴィル・サウンドの忠実な再現。トニーズの頃からエゲつないソウル趣味を見せつけておりましたが、ココまで徹底的にやっちゃうとは賞賛に値します。今年出たアル・グリーン大先生の激傑作と同様、R&Bがソウルって呼ばれてた時代のエッセンスを最高の形でアップデイトさせてくれていて、細部のこだわりなど本作もハンパではございません。しかもコレが単なるカヴァー集とかじゃなく大メジャーからのリリースとなる純然たる“新作集”ってのに意義があります。
そんな事で中身は古き良きソウルのモノマネでは片づけられない海原雄山が創り出した料理のような伝統的かつ新しい輝きに満ち溢れています。今のR&BやHip Hopの本質がどこにあるのかをビシーっと伝えてくれる秀逸な内容。前半からデトロイト流儀のシャッフルが心地良い「Keep Marchin'」に、Coolにホーンをフィーチャーした「Big Easy」と耳釘付けです。さらに中盤からのとてつもなく素晴らしい展開には、鼻腔開きっぱなしで慢性鼻炎の人も完治間違い無しです。UKの激渋歌姫Joss StoneがデュエットするIntrudersのCowboys To Girlsを思い出さずにいられないゆったりグルーヴがたまらん「Just One Kiss」、ラファエルのファルセットがエディ・ケンドリックスに聴こえてくる「Love That Girl」、ミラクルズのバラードを想起させる泣きの甘酸っぱいスロウ「Calling」、ラファエルのベースもジェイムス・ジェマーソン並みに温かく躍動感あるフレージングで迫る「Staying In Love」と文句のつけようがない流れ。またChi-Litesの曲とは別曲ながら、アノ感覚を甦らせるスウィートかつ切なく迫る「Oh Girl」はHip Hop界の重鎮Jay-Z参加ヴァージョンと2種収録です。そしてビヨ嬢主演のチェス・レコード・ストーリーの映画サントラにも入った「Let's Take A Walk」と続きますが、極めつけはニューソウル期のマーヴィン・ゲイを彷彿させる「Never Give You Up」。CJ Hiltonのマーヴィンまんまの声もニヤリですが、Stevie Wonderが絶妙のハーモニカ・ソロを挿入するところも狂喜乱舞です。全ての曲に共通して言えるのは、ちょっとカジっただけでは成し得ないソウル愛に満ちたサウンド構築が成されていること。ホントこういう男がシーンの中心に居座ってくれると、頼もしさ満開です。
「テンプスや、スモーキーと一緒くたに聴いても違和感まったく無しのスウィート・ソウル。必聴でっせ!」
Love that Girl
リュウ