Sweet Love / Anita Baker * 2002 WEA

打ち込み全盛となってきた80年代後半、生音のジャジーなソウルで勝負を挑んで大成功を収めたアニタ・ベイカー。バブリーな時代でゴージャス感が好まれた時です。アニタが在籍していたチャプター8からのパートナーといえるプロデューサーのマイケル・J・パウエルと共に創り出したクワイエット・ストームなる類いのアダルトな音は見事に時代に合致してブレイクでした。当時のバイト先の子にテープを借りて「なんとオトナな音なんや」と思ったのが、このアニタの“ラプチュアー”です。濃厚な味わいであるのに泥臭さは一切無いのが特徴で、カジュアルよりフォーマルって感じのお洒落感もナカナカです。そして何といってもレジーナ・ベルなんかと同様、歌が激ウマで落ち着いて聴くにはもってこいの完成された音楽。貧乏な生活でしたが、たまにこんなの聴くと心だけはバスローブにワイングラスでした。
本作は83~95年の集大成的な決定版リマスター・ベストで、今聴いても余裕の風格で聴かせてくれます。実にヒューマンチックで自然な音で全編流れるグルーヴは、当時のテクノロジーに頼らんかったぶん今も陳腐化せず新鮮に鳴り響きます。ブレイク前の1stからは「Angel」、「No More Tears」が収録で、すでにほぼ完成形といえるスムースな歌声披露ですが、時折おもむくままに感情むき出しソウルも一部聴けるのは魅力。ココで特筆すべきはデヴィッド・T・ウォーカー(g)、ネイザン・イースト(b)、ジェイムス・ギャドソン(dr)等が手堅いバックを務めているところ。そして出世作2ndからは大ヒットでクワイエット・ストームの代表格「Sweet Love」をはじめシングル曲「Caught Up In The Rapture」、名曲「You Bring Me Joy」など5曲収録。心地良いミッド・グルーヴも冴える「Same Ole Love」あたりも実に上品なノリでほんまよく出来てます。2年おきに発表した3rdや4thも優美な生音サウンド&ジャジーな歌声と軸はぶれません。「Giving You The Best That I Got」、「Just Because」、「Talk To Me」と華麗に迫ります。冒険はありませんが安定感抜群で聴かせてくれます。自らがプロデューサーを務めたエレクトラ最後のアルバムもタイトル・トラック「Rhythm Of Love」などいつものアニタですが、打ち込みトラックでの「I Apologize」などは新鮮に感じたりします。またJames Ingramをデュエット・パートナーに録られたサントラ曲「When You Love Someone」も上手いもん同志での録音で、黒さはあまり無いですが二人とも出しゃばらず、優美に歌いあげアダルト臭ばっちり。
「上品なメロウ&スロウが全体を支配。90年代のクラシック・ソウル・テイスト復興への橋を渡した人。」
Anita Baker - Bridge Over Troubled Water
たっきーくまきち
カッコイイ!