Wingspan / Paul McCartney * 2001 MPL

小学生の頃にジャイアンツ・ファンの私が必読だった新聞、報知新聞。99%巨人軍の話題がトップを飾る、ガキを洗脳するには一発の新聞でしたが、その巨人軍の話題を押しのけてトップを飾ったと鮮明に記憶するポール・マッカートニー。それはウィングスとして来日するも大麻で入国後即逮捕という衝撃的なニュースで、子供ながら結構必死で読みました。それによりポールの存在と、この人が超大物であるってことをしっかり認識しました。しばらくしてTV番組ヤングOH! OH!で紹介された「Coming Up」のPV。「こらぁかっこええやんけ~」となり、洋楽担当の兄貴に色々聞いて聴くようになりました。なにかと尖がった音楽を求めてた当時の自分にはソフトな音楽でしたので、積極的に聴きませんでしたが結構惹かれたのも事実。特に盟友ジョンの逝去直後の「Tug Of War」はスティーヴィー・ワンダーとの共演もあったりで何かとよく聴きました。その後の大学時代にも先輩にポールの熱狂的ファンがいてはって、よく何が素晴らしいか語ってられたので今もたまに聴いちゃいます。ビートルズはともかく、ウィングスとかソロ作は断片的にしか聴いてなかったりして好きな曲がパラパラだったのでこのヒストリー的集大成は重宝します。
さてこの2枚組、改めてポールの引き出しの多さに舌を巻きます。お利口さんなPopソングをイメージしがちですが、荒っぽいR&Rやソウルっぽいのもあったりでホント楽しめます。まず私の場合、ソロ曲といえばまず「Coming Up」。幻の来日事件の頃、流行った軽いファンク調の曲ですが実にイカしてます。サム&デイブのソウルマンにも似た構成ですが、ニューウェーヴ・テクノっぽいライト感がグッときたポールで最初の愛聴曲。そしてジョンの死を追悼しリンゴも駆け付けたポールらしい軽快さが良い「Take It Away」、映画は失敗に終わるもサントラ中の屈指のスロウであったと今も信じる「No More Lonely Night」と私のリアルタイム・ポールがしっかり収められてます。また後聴きでしたが、完璧すぎる曲づくりやと思った大傑作バラードでクサいけどええ曲というしかない「My Love」、フェイセズも演ってた絶叫ヴォーカルが震えるこれまたスロウ名作「Maybe I'm Amazed」なんかも何回でも聴ける素晴らしき逸品。個人的に外せんポール曲は前述分ですが、一般的なヒット曲も84年までに絞って厳選収録。Wingsとの「Band On The Run」、「Jet」、「Junior's Farm」やソロ初期の「Man We Was Lonely」など牧歌的な曲も結構チョイスされてるのが◎。ウィングス末期で、カンボジア難民救済コンサートでもハイライトとなった、ピート・タウンゼントらのThe Whoにロニー・レイン、レッド・ツェッペリンまで参加したロック・オーケストラ「Rockestra Theme」や、シングル・オンリーのディスコ「Goodnight Tonight」もバッチリ収録。また目玉は愛妻Lindaと共に幼き次女メアリーの声も聞こえる71年の未発表「Big Bop / Hey Diddle」で古い家族のアルバムを見てるような気分になり泣けます。ロニー・レインや有山じゅんじが演りそうな作風が胸にグッとくるんですわ。そんな事で、熱狂的ファンが多いポール・ファンの方に失礼なくらい上っ面しか聴いてませんが、このアホみたいなスター性・器用さは愛すべきもんで正に唯一無二です。
「ロック界のさんま・たけしみたいな存在で、ずっと最上級に君臨するポール。偉大なオヤジです!」
Maybe I'm Amazed
たっきーくまきち
上記の熱狂的な先輩は