The Baddest / 久保田利伸 * 1989 Sony

90年代N.Y.に音楽活動の拠点を移す前後から極上アルバムを必ず届けてくれる久保田利伸。しかしカラオケなんかでは、いまだに歌謡曲的親しみやすさのある80年代のデビュー当時の楽曲が圧倒的に歌われてたりなんかします。当時はソングライターとして田原俊彦なんかにもヒット曲も書いていて、ファンキーとか言いつつ個人的には「こんなもん、ファンクちゃうやんけ」と軽量歌謡ファンクと決めつけて理解を示しませんでしたが3枚目のアルバム「Such A Funky Thang!」から状況は一変。劇的に変化を遂げたそのサウンドは本場モンと遜色無い唯一の日本人R&Bアクトやと感じるようになりました。以降、ブーツィ・コリンズに接近したりもあって一気に本格派R&Bアーティストとして磨きをかけた感があります。でもR&Bとか聴かない会社の同僚とかと喋ってても「クボタは2枚目までが良かった」って奴が非常に多いのですが、本当はその逆やといっつも思ってます。ただ飲みに行っても歌い継がれる一般的なヒット曲の数々は初期に集中していて、カラオケで聴く機会の方が圧倒的に多かったそれらの曲を自発的に聴くようにさせてくれた素晴らしいアイテムが初のベストとして売れまくったこのアルバム。はっきりいってショボい音だった初期の曲を再レコーディング・リミックスを含め大胆に再構築したのが奏功しており、ほんまはオリジナルの方を聴きたい場合が多いこのようなベストでもこれだけは大歓迎でした。ちょうどガイとかアン・ヴォーグとかが出てきて今のR&Bの雛型ができた頃であったので、やっと初期のヒット曲も同列で聴けるわいと喜んだもんです。
そんなクボタ初期の超メジャー曲を多数収録した本作。1曲目はライブでも盛り上がり必至の「TIMEシャワーに射たれて」の再録版で一気にヴォルテージが上がります。全然気に入らんかったオリジナルが突然大好きな曲に変わったくらい変身です。日本で初めてのラップ・テイストを導入したヒット曲とか言われてますがココではあのSound Of Blacknessを従えたドラマティックな導入部を付け足しサウンドも大強化。感動的なイントロ部分からファンキーに迫る本編へとマジで最高です。そして生まれ変わった名アップ「流星のサドル」は「こんなにカッコええ曲やったけ?」と思ったほど洗練されたサウンドに変化。未発表だったミッド「Oh, What A Night!」も文句無しのナイス・グルーヴ。そして今のクボタの指向からすると“封印”していたというのも頷ける代表曲にしてカラオケ定番スロウ「Missing」。先般のスマスマで久々に封印を解いて木村拓也と歌ってましたが簡単に感動してしまいました。なんやかんや言ってもやっぱり美メロです。続くこちらも大定番歌謡R&B「You Were Mine」。いつも安易に酒場で歌おうとしますが実際はメチャ難しい曲です。他曲同様、本アルバムでのアレンジは秀逸でオリジナルとは雲泥の差です。他にも「永遠の翼」、「TAWAWAヒットパレード」、「Cry On Your Smile」など初期のキャッチーなシングル曲の魅力を最良の形で凝縮。クボタ特有の能天気なイメージがチキンからCoolに変化させてくれた名アルバムです。
「ファンキーを茶の間に持ち込んだ偉大な人。今でも目が離せまへん。」
TIMEシャワーに射たれて・
samyu