The Sun Years / Johnny Cash * 1990 Sun・Rhino

映画「ウォーク・ザ・ライン」もヒットし近年改めて偉大な功績の評価が高まったジョニー・キャッシュ。日本では考えられんほど本国アメリカではビッグなシンガーですが、デビューがエルヴィスと同じサン・レコードってことで、まずロックンロールのオリジネイターとして惹かれました。映画では60年代後半の伝説の刑務所ライブあたりまでの若き日々が描かれてますが、死ぬまで連れ添った2番目の妻であるジューン・カーターへの求愛ぶりがなかなかの見ものです。カントリー、ゴスペルをルーツに独自のスタイルでスターの座を勝ち取ったキャッシュ。ビッグ・スターになったのはコロンビア移籍後ですが、サム・フィリップスに認められメンフィスの地で録音されたココで聴かれる50年代の生々しい初期の名演の数々はエルヴィス同様今もビカビカに輝いてます。麒麟の川島が生まれる前からツカミで「I'm Johnny Cash」と低音でかましたキャッシュ氏。流石の男です。
音楽は最初からアメリカど真ん中を感じるカントリーロックの第一人者みたいなスタイルで、落ち着いた渋い歌声は実に魅力的です。冒頭に収められた「Folsom Prison Blues」から最高です。空軍入隊時代に書いた曲だそうで、刑務所の壁の中で汽車の音を聞きながら“自由はもう来ない”と嘆く詞を、お得意のバックビートに乗せて唄います。サン・レコードのオーディションでオーナーのサム・フィリップスを唸らせた名作です。またロックンロールな「Hey Porter」はヒルビリー調のアップテンポでサン・ロカビリーの傑作。映画のタイトルにもなった名曲「I Walk The Line」、ライ・クーダーも秀逸カヴァーも有名な18番「Get Rhythm」などの後々にも多く唄われた代表作はやはり色褪せることの無い素晴らしさ。特に「Get Rhythm」は学生時代にサークルのコンサート・タイトルにしてくれと懇願までした思い出深き逸品でロックンロールの古典としても最上級。語りもメチャ渋の「Rock Island Line」、雄大に歌い上げる「Home Of The Blues」、楽しいブギウギ「Luther Played The Boogie」、「Mean Eyed Cat」、「So Doggone Lonesome」などエルヴィスほど器用ではなかったにせよ痛快にワン&オンリーを貫く姿勢は賞賛に値します。またバックを務めるテネシー・トゥーも素朴で軽快な演奏でほんまに心地良いです。特にルーサー・パーキンスのギャロッピング・ギターはツボを押さえた渋いプレイでキャッシュの歌を上手く引き立ててます。共に活躍したカントリーシンガー、チャーリー・リッチの作品「The Ways Of A Woman In Love」も軽快に歌い上げていてたまらんです。
「死ぬまで脇目を振らずに自己のスタイルを貫いたおやっさん。立派なロックンローラーでした」
JOHNNY CASH- GET RHYTHM
Mr.Pitiful