Rare & Unreleased Recordings / Aretha Franklin * 2007 Atlantic・Rhino

最近また活発になっているアレサ関連のリリース状況ですが、アトランティック期の未発表音源が大盤振る舞いの2枚組で堂々のリリース。だいたいこの60年代~70年代前半の時期のアレサってどれ買ってもハズレ無しのモノ凄い絶好調ぶりでしたが、当時はアルバムカラーにそぐわんとか、プロデューサーであるジェリー・ウェクスラーの判断で一級品までもお蔵入りしてしまったようです。たいてい、こういった未発表モノはろくなもんが無いのが常ですが、そこは女王。しょーもないオリジナル・アルバムを軽く凌ぐクオリティでの登場と相成りました。立ち読みした音楽雑誌で“10数年に一度の傑作”とまで書かれているのを見て「また大袈裟な~」と思ってましたが、聴いてみてあながちそうでもないなと。今回、自らライナーを執筆した長老ジェリーも記してますが「何で発表せんと置いとんたんか、よう分からん」と述べるくらいのグレイトな録音の嵐で正直驚きます。まずオーバー・プロデュースが一切無いのは流石ジェリー。そしてアレサの声の生々しさ。尋常やないですわ。広辞苑にレディソウルって項目があったらアレサ・フランクリンと書きたいくらいの気持ちになります。
まず1枚目はジェリーに送った強烈なデモ・テープから3曲「I Never Loved A Man」、「Dr. Feelgood」、「Sweet Bitter Love」。鮮明にゴスペル回帰を打ち出した汚れ無き熱唱はこれからの方向性を明確に打ち出した記念すべきピアノ弾き語りでドラムとベースのみの簡素なバックが余計アレサの崇高さを引き立てます。後は未発表曲が続きますがコレがまた凄いことです。マッスル・ショールズの面々とのN.Y.録音である、James Brownのカヴァー「It Was You」、「The Letter」などバラードは最高の仕上がりで黙って聴くしかないです。Soul '69からのアウトテイク「Talk To Me, Talk To Me」ではKenny BurrellやRon Carterをバックにビッグ・バンド・ジャズで余裕たっぷりに聴かせます。他もボサノバ風ビートルズ「The Fool On The Hill」、マーヴィンのカヴァーも忘れられんJohnny Aceの名作「Pledging My Love/The Clock」、よりソウルフルなスプリームス「You Keep Me Hangin' On」、劇的な感動アレンジのシナトラ「My Way」、シンプルかつ力強いマーヴィン&タミーの「You're All I Need To Get By (alternate take)」、The Sweet InspirationsとCarolyn & Ermaのフランクリン姉妹のコーラスも最高な「Lean On Me」とカヴァーも完全に自分のフィールドに持ち込んで唸らせてくれます。
ニューソウル臭プンプンの2枚目は70年代中心でグッとファンキーさが増します。Chuck Rainey(b),Cornell Dupree(g),Bernard Purdie(dr)らと組んで録音した「Rock Steady」の激ファンク別ミックス、エドナ・マクグリフの最高すぎるメロウカヴァー「Heavenly Father」と1枚目のアーシーさとは違った魅力で溢れてます。洗練された演奏も魅力なクインシー・ジョーンズと組んだときの未発表曲も「Sweetest Smile And The Funkiest Style」や「This Is」、「Can You Love Again」など文句無しの高品質さ。見逃せないのがBobby Womack曲で「That's The Way I Feel About Cha」や終盤の「I'm In Love」は既発とは違った感動が味わえます。他にもwith Ray CharlesのTVライヴ「Ain't But The Love」、エタ・ジェイムスにも負けん「At Last」など極上の逸品が押し寄せます。最後はピアノのみでの「Are You Leaving Me」でまたもや震えさせてくれます。マジで全編アレサの凄みを体感できます。
「もう91歳になるジェリー・ウェクスラー爺。賞賛すべき仕事をまたやってくれました」
My Way
JJ