The Band / The Band * 1969 Capitol

メンバーの大半がカナダ人であったからこそ成し得たのか分かりませんが、アメリカ・ルーツ・ミュージックへの憧れを“よそ者”視点で最高の形で昇華させたザ・バンド。クラプトンとかストーンズの関連アーティストを聴き進むと必ず辿りつくのがゴスペル、カントリーやR&Bといった根幹にある音楽ですが、数多のロック・アーティストの中でも最もその根幹を大切にした人等やと思います。それだけに実に渋く、ヒットチャート的なキャッチーさには欠けますが一回足を入れるととズブズブとはまっていく感じで長いこと聴け、ええダシの出る利尻の昆布みたいな良さがあります。そのサウンドは源流を熟知していないと出せない音であり、先人への愛に溢れるアプローチはオリジナル楽曲にもしっかり表れてます。そんなザ・バンドの最高傑作にも挙げる人が多いこの2nd。何しろロビー・ロバートソン中心に書き上げられた楽曲の品質の高さが尋常じゃないのに加え、アメリカ南部を念頭に置いたコンセプト、「木の香りがする音作りを」と練られたサウンドの素晴らしさなど非の打ち所が無いほんまにええアルバムです。
まずはディキシー調の「Across The Great Divide」でスタート。このリラックス感がたまりません。フィドルを大胆にフィーチャーした「Rag Mama Rag」も快調で、ホンキートンクなピアノも絶妙。そして南北戦争を題材にしたヴァージル・ケインの物語「The Night They Drove Old Dixie Down」。もう言わずもがなの大傑作ですがリヴォンの感情溢れる歌唱も最高です。ニューオリンズ風のビートもたまらんヒット曲「Up On Cripple Creek」も泥臭いリヴォンの歌声が光ります。またリチャード・マニュエルが孤独感を表現した「Whispering Pines」も聴き惚れる逸品で実に味わい深いです。他にも力強いリック・ダンゴの歌声も冴えるハードな「Look Out Cleveland」、これまた傑作としか言い様のない哀愁スロウ「The Unfaithful Servant」、本編最後となるアーシーなガースのオルガンにロビーのペンペンギターも疾走する「King Harvest」と聴きどころ満載です。そして現行リマスター盤のボートラも聴き逃せん7曲です。上記掲載曲の別テイク集ですが、リハーサル丸出しの「King Harvest」などまた違った味わいがあり実に興味深いもの。シングル曲ながらライブ盤でも演ってた軽快に決める「Get Up Jake」の別テイクなんかも収録で大満足の1枚となってます。
「聴くもんに困ったらザ・バンドってのが定石。なんか癒されるんですわ」
The Night They Drove Old Dixie Down
リュウ