P.M.9 / 矢沢永吉 * 1982 Warner Pioneer

信じるものを持って突っ走っている人は崇高で美しい。そして人を魅了する。いくつになってもいちいち格好良いのが日本のロック最高峰“永ちゃん”です。この人の発言などは一字一句聞き漏らすまいと耳を傾ける程、存在自体に惚れ込んでしまいます。こんな「ビッグ」な人はそう出て来ません。正にカリスマ。昔は永ちゃんが嫌いっていう奴とは友達にはなれないくらい思ってました。先般TVに出てきた永ちゃんが歌った超名曲「Yes My Love」は久々に体に100万ボルト走りました。曲の素晴らしさもさることながら衰えない歌唱、動き、視線、口笛、着ていたシャツまで全て完璧でコレくらいのカリスマ性を持った人はいないと改めて感じました。やっぱスーパースターはそこらにおるあんちゃんではあきません。廻りを圧倒するオーラと人並み外れた行動力で国民の注目を向けさしてきた永ちゃんはやはり偉大です。数多の名作が存在しますが、Kiss Me PleaseやKavachと並んで最もよく聴いたのがこの大傑作P.M.9です。後に著書で海外進出について「ワーナーに騙された」とまで回顧していますが、L.A.録音の永ちゃんセルフプロデュースで日本市場向けに録られた恐ろしくクオリティの高い本作の価値が落ちることはまず有り得ません。
まず「Without You」でワーナー期以降濃くなったAOR路線が最高の形で提示されます。L.Featのビル・ペインにジェフ・ポーカロ、ニコレット・ラーソンと錚々たる面子で録音された冒頭のこの曲は洗練された音に永ちゃんのダンディズムが最高の相性を見せる傑作でしびれまくりです。続いてハードな「Rock Me Tonight」、クールなミディアム「Ebb Tide」と最高の流れです。余談ですが昔、永ちゃん命の人のおかげでこれらの曲をバンドで演る機会がありましたが再現が非常に難しかったのを思い出します。また素晴らしすぎるのが要所に収められたスロウで、メロウの極み「Lahaina」や「Yes My Love」は金字塔的名曲で一生聴き続けること間違いなしです。またR&Rナンバーでは、近年のライヴハウスツアーのオープニングでも歌われ震えまくった「Hold On Baby」とこちらも大充実。他にも渋すぎる「No No No」、ゴージャスに決める「Jealousy」、ブギー調もカッコええ「熱帯夜」と駄作無しの奇跡的展開であっちゅうまに聴き通せます。
「ゴチャゴチャ言う奴はほっとけと教えてくれた永ちゃん。日本一のオヤジでいてください!」
YES MY LOVE
samyu