Standing In The Shadows Of Motown / Soundtrack * 2004 Motown

長年、正当な評価を得ないまま知られらる存在だったモータウン黄金期デトロイト時代の演奏者The Funk Brothersにスポットを当てた素晴らしき映画のサントラ。この前、映画がTVで放映され食い入るように見てしまいました。モータウン・サウンドの故郷である“蛇の穴”とも呼ばれた小さなスタジオ。そこはプレイヤーの創造力とベリー・ゴーディのヒットへの祈りがこもった凄まじい感情の重みが渦巻いた場所で、ヒッツビルUSAと称された舞台での演奏者の証言を元に淡々と描かれます。その中で驚きなのは、その殆どが一発録りのレコーディングで完璧といえる名曲群が量産されたって事です。そのファンタジー・サウンドの要となったベニー・ベンジャミン(Dr)とジェイムス・ジェマーソン(b)の逸話は興味深いものばかりで、ベニーの躍動感溢れるフィルインのセンスやジェイムスの驚異の指一本弾きによる画期的なフレージングはプロデューサーの信頼も絶大であったようです。会社がL.A.に移転して10数年した時に華々しく開催された「モータウン25周年コンサート」に自らチケットを購入し2階席で見た直後にひっそり他界した最大の功労者ジェイムスの晩年は涙を誘います。またそれぞれが腕利きのジャズ・ミュージシャンで、夜毎デトロイトのクラブで演奏されたジャズ・セッションのアイデアがモータウンのレコーディングに反映されたというのも興味深い所です。あの音にはミュージシャンのアレンジ・センスに依るところが大きかったにもかかわらずギャラは安かったらしくオーナーであるベリー・ゴーディのケチっぷりもなかなかですが、これだけの敏腕メンバーを集めた経営手腕やセンスはやはり脱帽です。それでモータウンの連中は秘密のアルバイトとして他の会社のレコーディングにも参加し、アトランティックのヒット「Cool Jerk」など多数あったようです。(劇中Booty Collinsが熱演)
映画では再結集したThe Funk Brothersのライブも見ものです。惜しくも亡くなったGerald Levertが歌う「Reach Out I'll Be There」、Chaka Khan & Montell Jordanでの「Ain't No Mountain High Enough」はじめJoan Osborne、Meshell Ndegeocello、Ben Harper、Booty Collins等がヴォーカリストとして数々のクラシックを好演。そしてライブ・シーンでの終盤にあるメンバー紹介のシーンで故人までも演奏席にパネルを置いていってミュージシャン全員を敬意たっぷりに紹介する場面。これがまた泣けます。大きな光が当てられることなくこの世を去った偉大なる演奏家達も報われる気がします。何より素晴らしいのは、貴重な証言が映画という記録となって全世界に供給されたって事です。
「ドリーム・ガールズと対で見るべき傑作映画。彼等無しにモータウンの栄光無しと痛感。」
Montell Jordan & Chaka Khan - Ain't no Mountain High Enough
Joan Osborne - What Becomes Of The Broken Hearted
とらじろう
永遠のモータウン