I'm In Love / Wilson Pickett * 1968 Atlantic

世の中にはエエ歌がぎょうさんありますが、秒殺即死させてくれる曲は数少ないモンです。ココに収録されてるピケットの代表曲のひとつ「I'm In Love」という曲は正にそんな曲で歌に入った途端即死させてくれます。作者のボビー・ウォマックの奏でる哀愁溢れるイントロも劇的に素晴らしいですが、物凄い声圧で入ってくるピケット氏の「アィミンラーッ!」といきなりかます塩辛ヴォイスは脳天をバズーカ砲でぶち抜かれる感じです。しかもバラードです。こんなバラードそんじょそこらに転がってません。ホーンが入ってくるところで更なる絶頂を迎えるこの曲はウォマックが、師匠サム・クックの亡くなった後に未亡人のバーバラと結婚した事で世間から非難轟々で落ち込んでるときに書いた曲で、真摯なバーバラ夫人への愛を最高の表現者ピケットに託した奇跡の名曲です。そんなピケットのキレの良いハスキーヴォイスが冴えまくるアトランティック5作目はメンフィス・アメリカン・スタジオで録音されたバックの演奏も申し分無しの1枚です。
中身は冒頭から重々しい恨み節「Jealous Love」でピケットのがなり具合も上々です。続いて得意のジャンプ・ナンバーはロイド・プライスのカヴァー「Stagger Lee」。同じ調子でドン・コヴェイ作の「That Kind Of Love」でも軽快にシャウトしまくります。そして間違いなくハイライトといえる表題曲の後は、王道ミディアム「Hello Sunshine」でリズム隊のジーンクリスマン(Dr)、トム・コグビル(b)も最高のうねりを見せます。またアップの「Don't Cry No More」ではサックスのキング・カーティスがグレイトなソロを披露。他にもゴスペルチックな激唱がたまらんサム・クックの名曲「Bring It On Home To Me」、実にドラマティックなウォマック作バラード「I've Come A Long Way」と歌・演奏共に絶好調です。更にRhino再発盤にはファンクっぽいバックも面白い「Let It Come Naturally」、烈火の如く熱く叫ぶ「Gospel Jam」など4曲追加収録。
「Wicked Pickett(いかした)と異名を持った男。名前負けしてまへん。」
I'm In Love
リュウ