Who Are You? / 桑名正博 * 1976 RCA

何を歌っても我がの色に染めてまう偉大なシンガーは限られます。この人が歌わんと様にならんってな曲を多く輩出してきたロックンローラー桑名正博。ガキの頃は音楽番組でチャートを賑わしたり、大麻で捕まったり、アン・ルイスと結婚→離婚したり何かと派手な話題を振りまいていましたが、何ともカッコええ“これぞロックや”と思えた声・歌い方は皆が認めるところでした。十数年前たいしたヒット曲も出してなかった頃、活動拠点を大阪に戻すってだけでTVで3時間くらいスペシャル番組がココ地元関西では組まれたくらい愛され続けるキャラで、今もたまに出てきてはガンガン歌ってくれる頼もしい存在です。一般的にはTeardropsの頃の「セクシャル・バイオレットNo.1」や「哀愁トゥナイト」とか歌謡ロック的ヒットが有名ですが、もともとはファニー・カンパニーとかソロ初期のアメリカ系の渋く泥臭いロックがルーツって感じです。先のTVで元ファニカンのメンバーとニール・ヤングのOhioとか演ってましたがもう絶品の出来でした。何せあの迫力ある声ですからソウルとかもバッチリの相性で企画盤で披露したウィルソン・ピケットとかサム&デイヴとか歌っても天下一品です。このファニカン解散後出したソロデビュー盤は全然派手やないですが、名曲「月のあかり」に通づる渋いナンバーが収録の傑作でございます。
中身は殆どの曲が名コンビ下田逸郎(詞)&桑名正博(曲)で占められており冒頭の「白い朝」からゆったりとしたテンポの中、無茶苦茶カッコええ桑名節が堪能できます。続く「気楽な女」も全盛時のウェストコーストサウンズを彷彿させる軽快なテンポでR&Rし、ファニカン的な「馬鹿な男のR&R」あたりもアーシーに迫ります。しかしながらこのアルバムの価値は「夜の海」、「真夜中列車第2便」にあると言い切ります。前者は妹である桑名晴子も絶妙のハーモニーで絡むメロウなバラードで今もたまに歌ってくれる大傑作。またファニカン末期にできたという後者も哀愁たっぷりのメロディラインが桑名氏のハスキーな声と共に心の琴線を刺激しまくる傑作でコチラも妹・晴子氏の声がナイス・アシストです。何せ全編シンプルな音だけに歌謡ロック時代より古臭くならず今も輝きます。
「今は父の家業も仕切る多忙なチョイワルオヤジ・ロッカー。社長!またよろしゅうたのんまっせ!」
とおる
こんにちは