Anthology 1 / The Beatles * 1995 EMI

今から20年ほど前、かなり評判となったビートルズのアンソロジー・プロジェクト。それというのも驚愕となった「Free as a Bird」なる新曲が収録されたから。勿論ジョンはすでにいなかったので、ジョンの残した77年のデモ・テープに、ポール、ジョージ、リンゴの3人がオーバーダブを施し、ジェフ・リンが手を貸して仕上げたシロモノ。斜に構えることなく聴くと、ほんとイイ曲です。ジョンのヴォーカルからポールのブリッジ部分、ジョージのスライドと、90年代にビートルズが現役だったらこんな感じだったかも、と想像できそうな優しいメロディです。
目玉の新曲以外は歴史を追った資料的内容で、ビートルズを全て聴き尽くした人向きのマニアックで掘り下げたもの。過去にブートレッグ等で有名な音源だったらしい音も多数収録です。The Quarry Men(ビートルズの前身)による58年のSP録音で、手本としていたというバディ・ホリー「That'll Be The Day」から始まり、スチュアート・サトクリフがベースでいた頃のホーム・レコーディングや、トニー・シェリダンのバック・バンド時代と下積み時代の音源がピックアップされて聴けます。シェリダンとの「My Bonnie」や、ジョンのVoで聴けるジーン・ヴィンセント「Ain't She Sweet」あたりは音も良くてカッコいい演奏。そしていよいよ62年1月のデッカ・オーディション音源で、お得意コースターズの「Searchin'」に「Three Cool Cats」、ポールの「Like Dreamers Do」、ジョンの「Hello Little Girl」と、ほぼ1stと地続きの演奏。デビューきっかけとなる6月パーロフォン・オーディションではジョン、ポール、ジョージにピート・ベストがドラムで、レパートリーだった「Besame Mucho」に、デビュー曲となる「Love Me Do」が登場。そしてデビュー決定となり、リンゴが参加となった「How Do You Do It?」、アンディ・ホワイトが叩いた「Please Please Me」、「One After 909」の初期ヴァージョン、放送用音源でのカール・パーキンス「Lend Me Your Comb」と続きますが、白眉は63年ストックホルムでのラジオ・ライヴ5曲。ここでの「I Saw Her Standing There」、「From Me To You」、「Money」、「You Really Got A Hold On Me」、「Roll Over Beethoven」は4人が強靭なR&Rバンドであった裏付ける必須パフォーマンス。後半はイギリス王室コンサート、コメディ番組“マーカム&ワイズ・ショウ”、エド・サリヴァン・ショー等のライヴ・テイクからの収録が続きます。そしてグッと耳を惹きつけるのが3rdでのセッション。R&B度を増した「Can't Buy Me Love」や「You Can't Do That」の別テイク、「And I Love Her」のバンド感溢れる初期テイクなど、素晴らしき演奏です。TV特番アラウンド・ザ・ビートルズでの「Long Tall Sally」、アイズレーBros「Shout」なんかも迫力ある演奏で必須です。ジョージの未発表曲「You Know What To Do」に続いては、大好きな“フォー・セール”セッションで〆。別テイクの「Eight Days A Week」、激熱の「Kansas City/ Hey! Hey! Hey! Hey!」、お蔵入りとなったリトル・ウィリー・ジョンのカヴァー「Leave My Kitten Alone」はクオリティの高い演奏で興奮必至。
「資料価値以上の聴き逃せない熱い演奏もあり。R&Rファンはスルー厳禁!」
Free As A Bird
Leave My Kitten Alone
Live Stockholm 1963
波野井露楠
No title