Crosseyed Heart / Keith Richards * 2015 Republic

ストーンズ・ファン待望のキースの新作が世界同時発売。シルバー・ウィークながら普通に仕事なので、これがささやかなお楽しみ。GRRR!でのストーンズ新曲が快調だったので、次はストーンズとしてのフル・アルバムかと思ってたら、近年は味のあるシワを増殖中のキースが、まず景気づけに久々のソロ作です。ストーンズの延長で、どうしても聴いてしまうので、個人的にはもう聴く前から高下駄履いたような評価になってしまいます。とはいえソロがしょーもないかといえば88年の“Talk Is Cheap”というリアルに素晴らしい実績もありますので、期待は高まります。ミックほど彩りはない枯れたヴォーカルとはいえ、名プレイヤー揃いでお馴染みのThe X-Pensive Winosとのセッションは何とも心地良し。スティーヴ・ジョーダン(ds)、ワディ・ワクテル(g)、アイヴァン・ネヴィル(Key)等とのいぶし銀グルーヴは健在です。
まず2015年にしていきなりカントリー・ブルースをブチかます「Crosseyed Heart」での心意気に胸打たれます。“何が悪いねん”と居直った直後の「Heartstopper」で60年代風キャッチーに迫るとこがお茶目。シブシブのカントリー・バラード「Robbed Blind」をキメた後は、先行カットで聴けた「Trouble」が登場。ストーンズ流儀をワイノズに移植したストロング・スタイルで、リフ主導の一番美味しい形が聴けます。ん〜カッコいい! 緩急をつけるお得意のレゲエ・カヴァーのグレゴリー・アイザックス「Love Is Overdue」の後は、会心のキース節「Nothing On Me」が登場。“ビースト・オブ・バーデン”風味の好曲で、男の哀愁をしっかり感じさせます。また惜しくも亡くなった盟友ボビー・キーズのサックスも聴ける50’sライクなごきげんブギウギ「Blues In the Morning」、実にキースらしい8ビート展開でサラ・ダッシュのコーラスも相性バッチリな「Something For Nothing」などは88年のファーストをなんとなく彷彿させ、ニヤリとする嬉しい展開。ここらへんは個人的ハイライト。数少ないゲストのひとりNorah Jonesとの共演曲「Illusion」や、レッド・ベリーのカヴァー「Goodnight Irene」など、70を超えたキースらしい渋く落ち着いた曲。クラブハリエのバームクーヘンにも負けない上質な年輪です。「Substantial Damage」はストーンズ的なリフ&ジャムなノリ一発の曲ですが、カッチリさせずラフなまま聴かすのは良くも悪くもキース的な仕上り。そしてスプーナー・オールダムが鍵盤で参加したサザン・ソウルなスロウ「Lover’s Plea」で〆。
「変わらない深いモノトーンを見せつけたキース爺。次はカラフルなストーンズも待ってます!」
Trouble
kuro
最高です