KUWANA / 桑名正博 * 1988 Moon

TVの音楽番組が増えたっていうけど、屁みたいな音楽ばっか流してもらっても困ります。胸の奥底まであつかましく入ってきてくれるような人がチョコチョコおらんとね〜 その点でいくと、全盛時にはTVにも出てガンガン、食い込むロックを歌ってくれてたのはマサヤン、桑名正博さんです! しゃべりも面白いモンやからトーク番組にもよく出ておられましたが、抱えたギターで“むぅ〜ふぅ〜♪”と突然、自分に心地良く酔って歌い出すってのもしょっちゅう。そしてペースを乱されるとムッとするってな具合。この、あつかましくも微笑ましい桑名ワールド。ほんま最高の人でした。裕也さんとこの番頭役もしっかり務めてた男気溢れるロック界の兄貴。海の向こうのロッドやミックもカッコ良かったけど、おんなじレベルでカッコええホンマもんのシンガーでした。
そして、この自分の名前を冠した本作。80年代は俳優業にも熱心だった最中、突如ミュージシャン復活の狼煙を上げてくれた力作です。Shogunの芳野藤丸氏が全面プロデュースでカッチリしたロック・アルバムをドロップしてくれて日本のロックファンもよっしゃ〜となりました。なお藤丸氏は2年後、マサヤンの盟友もんたよしのりとも大傑作“On The Border”をも出してます。一時は藤丸再生工場と言われたほど(←嘘です)。 中身のほうは、何と言っても劇的にカッコいいR&R「いいヤツ」でスタート。もう鳥肌モンで、DNAの細胞レベルでロックを分かってるとしか言いようのない、強烈ドライヴィング・ナンバー。この曲だけで“買い”です。バラードも最高なのですが、この辺のR&Rをマジで海外モンに負けん位の迫力とあつかましさでカマしてくれるのは、やっぱ桑名のアニキです。「10 Years After」や、渾身のシャウトが聴ける「トーキョー・ローリング・ダウン」など、全体的には大陸的で洗練されたロックを構築です。といってもお得意の“がなり”が随所に挿入されますので、ただの曲には落ち着きません。パワー・バラード「Again」あたりも聴きものですが、後半のハイライトとなる「ハンキー・パンキー・レディー」はファニー・カンパニー時代彷彿のブギー・ナンバーで興奮です。メロウを演っても「ドレスのすきま」なんかメチャメチャ男前にキメてます。
「聴きやすさに溢れたシーンになった現在、こういうウルサイ人が恋しくなりまんな」
10 YEARS AFTER
guitamac
ご無沙汰しています