The Complete Don Bryant On Hi Records / Don Bryant * 2000 Cream(Hi)



サザン・ソウルの魅力にハマったきっかけとなった人、ドン・ブライアント。80年代の後半、ビクターがスタックスやマラコのCDを発売する中、その中で見っけたのが自分にとって未開の域だったハイ・レコードのコンピレーション。それを聴いてしまった日からもうメンフィス・ハイ・サウンドの虜。オーティス・クレイやアル・グリーン等の代表曲に混じって収録されていたドン・ブライアントの「I'll Go Crazy」は、“俺の探し求めてた音はコレ!”っていうくらい気に入って聴きまくり。実はアルバムも1枚(写真中、Precious Soul)しか残してない人で、嫁さんアン・ピーブルズのようにヒット・シングルがたくさんある人ではないのですが、ソウル・ファンにはシングル曲中心に確固たる評価が高い人。ハイ全盛期には主にコンポーザーとして貢献しつつも、自らのシンガーとしての曲もサザン・ソウルの金字塔的傑作が多く個人的にスペシャルな人。こんな男前声の塩辛ハスキーはなかなかいません。
何はともあれ、サザン・ソウルの完成形と声高に言いたい68年「I'll Go Crazy」は正に絶品中の絶品ソウル・バラード。You sure know how to Love me〜♪という出だしからブルブルきます。緩急のつけ方もパーフェクトで、3番の感情が高ぶった歌唱など失禁もので、僅か2分で終わってしまうのが残念でならない珠玉の名曲。他のスロウも完成度は総じて高く「Don't Turn Your Back On Me」、「I'll Do The Rest」、「The Lonely Soldier」、「The Call of Distress」、「Is That Asking Too Much?」等、60年代中心なのでハイ・サウンドはまだ完成されてないですが、泥臭いメンフィス・サウンドでドンが熱い歌を繰り広げてくれます。ここらのシングル曲中心に70年代に日本独自でLP(写真右)が組まれたのも納得です。65年頃のウィリー・ミッチェルのバンド・シンガーだった時の「That Driving Beat」あたりのジュニア・ウォーカーっぽいジャンプ・ナンバーも垢抜けずとも、カッコ良し。また少しカーラ・トーマスっぽいMarion Brittnamとの曲は「I Will Be True」始め7曲収録でこちらも相性の良いデュエットが聴けます。本作にまるまま入ってる69年アルバムの"Precious Soul"は自作曲がブレイクしなかったからか、当時のソウル・ヒット・カヴァー。「Funky Broadway」など3曲も演ってるピケット曲は相性良し。溌剌な「Soul Man」、「When Something Is Wrong With My Baby」、C.カーターの「Slip Away」のスタックス曲や、「Expressway to Your Heart」、「Cry Baby」など聴き応えはあります。60年代は未発表に終わった「Walkie Talkie Love」等のジーン・ミラー・バンドのコラボも切れ味抜群の歌唱を披露です。
「私にとってのディープ・ソウルの理想を示してくれた人の、ほぼ全貌。しびれる〜!」
I'll Go Crazy
Mr.Pitiful
No title