The Goldwax Years / Spencer Wiggins * 2006 Kent

結構、大きかった台風も去って、ここは落ち着いてサザン・ソウル。ディープ好きには、ほとんど神として崇められるスペンサー・ウィギンスです。60年代活動期に在籍したレーベルもゴールドワックスにサウンズ・オブ・メンフィスと、好き者ならばその名を聞くだけで海綿体に血が流れ込むキャリア。個人的な好みではプライオリティはドン・ブライアントやオーティス・クレイの方が上ですが、濃厚でコクのある歌唱はやっぱグレイト。こちらのゴールドワックスでの録音集は、ディープ・ソウルが好きっていう人にとってはマストの1枚。本国アメリカでは無名だったにも関わらず、日本では早くから愛されてきた人です。自分の出会いも、昔に神戸元町にてバイトをさぼってよく寄ったレコード店で壁に飾られてた"Soul City U.S.A"なる日本編集LPが最初。日本はこの手のシンガーに理解が深く、ラティモア・ブラウン同様、最初にLPが組まれたのは日本だったそう。今はすっかりお家芸となるソウル発掘仕事で英Kentが音質向上で上手くオーガナイズしてくれてます。
本作は65〜69年の作品集。LPでは冒頭を飾っていた「Take Me Just As I Am」の抑揚をつけた感情表現にやっぱ心惹かれます。アーサー・コンレーで初めて知ったダン・ペンの傑作ですが、ココでのスペンサーの完璧な歌唱は最高。まぁダンって名の人は、檀蜜といい、モロボシ・ダンといい、皆ええ仕事してます。本作のポール・ポジションに位置する「Once In A While」などイントロの女声コーラスからスペンサーのハスキー・テナー炸裂といきなり琴線を刺激してきます。バラードは数々は他も絶品で、「That's How Much I Love You」に、「The Power Of A Woman」、こちらもダン・ペン作の大傑作「Uptight Good Woman」と丁寧な歌唱と気張った独特の荒れたガナリ声に酔いしれます。3連ミディアム「Old Friend」、アレサの名曲「I Never Loved A Woman」あたりも味わい深し。リズム物も、デビュー曲「What Do You Think About My Baby」、「He's Too Old」、最もポップな「I'm A Poor Man's Son」、迫力のジャンプ「Soul City U.S.A.」と全く売れなかったのが不思議なハイ・クオリティ。未発表曲では、イナたいソウル・バラード「I'll Be True To You」、重心低くスウィングするリズム・ナンバー「Who's Been Warming My Oven」あたり聴きどころ。他に、ボビー・ブランド感覚のブルースなんかも歌ってます。
「ソウルの心は演歌の心。メンフィスの"村木賢吉"が泣かせます!」
Uptight Good Woman
ひるのまり
No title