
解散前の作品としては大概アビーロードが名作と祭り上げられていますが、なんのなんの、私にとっての名作はむしろコッチ。昔映画を深夜放送で見て余計に魅力的なモノとなりました。それは人間のエゴや壊れかけのバンドをリアルに見せつけたモノで、緊張感溢れる張り詰めた状態の演奏の数々でした。うまく言えませんが、スーパースターであるビートルズも人間なんやと思わせてくれたヒューマンドラマが凝縮された、親近感が妙に沸いたアルバムです。故に名演が多く(私自身のバンドで実証済)原点に返ろうとモガき苦しむ様が最高に美しい曲群です。またBilly Prestonの全編参加もコノ盤をハイクオリティーにしており最高のソウルフルなフェンダーローズを奏でています。オーバー・プロデュースやと揶揄されたフィル・スペクターの音処理も個人的には気に入っておりまして、本アルバムの決定版として近年発表されたネイキッド版よりもやはりコチラがお気に入りです。
アルバムは劇中の声なんかも効果音的に残されていてそれもまたエエ感じです。ポールのベースも秀逸なオープニング曲「
Two Of Us」は朴訥とした雰囲気も素晴らしい傑作。この時期のジョンのベスト・ワークスとも思える「
Across The Universe」も単純に美しい癒しの名曲。しかしながら何ぼ変わった趣味と言われようとベストトラックは「
Dig A Pony」と「
I've Got a A Feeling」。正にビートルズ・ソウルとでもいうべき泥臭くも美しいフィーリングは何度聴いても鳥肌がたつ逸品で4人の演奏のマジックをまざまざと見せつけます。シングルで発表されたタイトル・トラック「
Let It Be」はジョージのGソロも違ったアルバム・テイクですが曲の素晴らしさは言わずもがなで、こちらはビートルズ・ゴスペルとでも言うべき大ヒット。また賛否ありますが馴染み深いストリングス入りの「
The Long And Winding Road」はやっぱ心の琴線を直撃します。物悲しささえ漂う初期に立ち返ったロックンロール「
One After 909」、「
Get Back」は初期の切れ味には劣りますが熟練の味も感じる味わい深さも楽しめたりします。
「ネイキッドを聴いて、さらに愛着を感じた本アルバム。人間ドラマですわ」