Soul Portrait / Willie Hutch * 1969 RCA

最近、顔が逆向きで再発されたウィリー・ハッチの名作。ソング・ライターとして頭角を現してきた60年代後半、シンガーとしてのメジャー・デビュー作としてRCAからリリースされたのが本作。モータウン移籍後の「Foxy Brown」なんかの映画音楽で脚光をあびる人ですが、裏方としてもジャクソン5のヒット曲のヴォーカル・アレンジやフィフス・ディメンジョンのプロデューサーでも活躍しはったそうです。ニュー・ソウル期の要人みたいな感もありますが、70年代突入前の本作で見せる剥き出しの熱きソウル魂は見逃せません。シンガーとしても、かなり魅力的な存在です。60年代ソウルの最後の輝きみたいな名演がぎっしり詰まった傑作です。
中身は何といってもサム・クックの継承者といっても過言でない激グレイトな歌いまわしが光ります。コレはその筋が好きな人なら、まず聴き惚れてしまいます。1曲目の「Ain't Gonna Stop」を聴いただけで“合格~っ”とガッツポーズすること間違い無し。続く「You Can't Miss Something That You Never Had」はリズムを強調した作品で、さらに熱い歌声が爆裂するナンバー。適度なポップ感も絶妙な塩梅です。曲調に新しさも見え隠れするややニューソウル的なスロウ「A Love That's Worth Having」はちょっと重めですが、次に来るサザン・ソウル調のミディアム「Good To The Last Drop」、「That's What I Call Lovin' You」では“さすが大将、わかってらっしゃる”と言いたくなるグレイトな節回しで万歳三唱。曲も素晴らしく本作のハイライトです。ノーマン・ウィットフィールドがやりそうなファンク風味も加わる「You Gotta Try」や「Let Me Give You The Love You Need」あたりは好みが分かれそうですが、高品質であることには違いありません。しかしながら次に待ち受けるサムの亡霊が乗り移ったかの如く快調に飛ばすミディアム「Lucky To Be Loved By You」は唸るしかありません。栗カンの山田ルパン並みに芸術の域で聴かせてくれます。後半戦も、サム&デイヴなんかが演ってもハマりそうなストロング・スタイルが光る「Keep On Doin' What You Do」、しょーもない曲ながら歌声だけは最高なジャッキー・ウィルソンの名曲とは全く別曲の「Your Love Keeps Liftin' Me Higher」と快調に歌い切ります。これからの成功を予感させるようなポジティヴな佳曲「Do What You Wanna Do」で、最後も力強く締めます。なんせ“なぜコレが名盤なのか”がどっから聴いてもすぐ分かります。
「ウィリーの気合いが痛いほど伝わる名唱の数々。ソウルの最も美味しい部分が凝縮された1枚。」
Good To The Last Drop
ナルダン珈琲店主