There's No Place Like America Today / Curtis Mayfield * 1975 Curtom

いよいよ激動の一年も終わりですが、今年は後半から世界的金融危機の煽りで社会不安が高まり、生活防衛による消費不況、企業業績不振での雇用悪化とロクな事が無いような感じでした。先日、他部門へ朝礼しに行って、そんな現況を見据えた販売戦略を皆に話したらアホな経営層から「そんな景気の悪い話、朝からマイクでするなっ」とドヤされました。今こそ冷静に消費環境を見直して取り組まなアカンのに「このオッサン、あほちゃうか」と思いました。まぁお構いなしに持論を曲げずに来年は逆襲したろと誓いましたが、70年代にカーティス・メイフィールドが直面してる不況を切り取って上手く仕上げたのが本作。苦しい時こそ現実に目をそらさず局面を乗りきるべきだと言ってるような名作で、シカゴ出身の平和主義者カーティスの熱きメッセージです。裕福な家庭の看板を尻目に配給の列を描いたシリアスなジャケが30年前の作品とはいい荒廃した今の社会情勢を想起させます。異様なほどの緊張感に満ちた傑作です。
中身は全体的に重くシリアスなクール・ファンクで綴られてますが、隙間を活かした張りつめた雰囲気で進行していく様はコッチも手に汗握ります。冒頭から緊張感満載の本作を象徴する名ファンク「Billy Jack」でスタート。そして“いい暮らしがしたいなら自分を見極めるんだ”と諭す「When Seasons Change」も、シンプルなワウ・ギターと絶妙のファルセットで表現するドス黒い名作。ギミック無しに淡々と進行していくのが逆に耳を惹きつけます。3曲目に傑作にして唯一のラブ・ソング「So In Love」が登場。厳しい現実を直視した内容が続くアルバムの中でホッとする瞬間で、ホーンやオルガンも絶妙のグレイトな逸品。後半も、苦しい現状を神に祈る「Jesus」や、「Blue Monday People」、「Hard Times」と不安定な世間を風刺しますが、効果的なコンガや隙間を多用し凄みを持って迫ります。最後は麻生首相にもぜひ聴かせたい「Love To The People」。正に今と同じような失業者続出のTVニュースや圧しかかる税金を嘆くなか、そんな時こそ愛やプライドが大事と説きます。結構Love&Peaceを歌ったカーティスにしては異色ですが、プリンスやディアンジェロにも引き継がれたクール・ファンクには何度聴いてもシビれさせられます。
「“止まない雨はない”ってよく言った今年。来年は“儲かって笑たろかい”っていきたいもんですわ」
Billy Jack
So In Love
hidekichi
この時代の