The Man And His Music / Sam Cooke * 1986 RCA

アメリカ大統領選は民主党のオバマ氏が感動的な勝利で終えました。アメリカ初の黒人大統領ということもあり歴史上でも画期的なことです。政治思想はともかく有色人種からの選出ってのが嬉しいやないですか。歴史的に見ると長年に渡って迫害されてきた黒人がアメリカの大統領です!まさに歴史的瞬間です。ぜひ人種の壁など関係なく、指導者として米国そして世界を平和に導く成功者として歴史に名を残して欲しいです。人種差別問題が少ない日本に住む我々にとっては、我が事のように本当に理解することは難しいのかもしれませんが、真の民主主義が一歩進んだことは歓迎すべきことです。そんなオバマ氏の勝利の演説が行われた地元シカゴで育ち50~60年代の公民権運動が盛んな最中に、国民的スターとして活躍したのがMr.Soul サム・クック。オバマ氏も演説で常に唱えていた“Change”という言葉の中で、思い浮かべるのはサムの名曲「A Change Is Gonna Come」です。晩年、すでに大スターであったサムがボブ・ディランの「Blowin' In The Wind」にインスパイアされてつくった曲で、黒人である同胞への思いが込められた名曲です。サムは発表直後の64年、人気絶頂の最中に非業の死を遂げましたが、当時キング牧師の偉大な演説に通ずるこの名曲に込められた思いが今、現実に近づいたことは感激です。
そんな事でサム・クックの生涯を綴ったバイブル的CDとして君臨してたのが本作。今ではアップデイトされ微妙に内容が違うべストが流通してますが、長きに渡ってバイブルとして機能した名編集盤です。先の名曲でも、問題視されたのかコレが出るまでカットされてた「I go to the movie, and I go downtown~」のくだりも初めて日本で収められた記念すべき編集盤でもありました。なかなか契約の関係でスッキリしたCD発売がなされないサム・クックですが本作は理想的な選曲の絶賛すべき内容で今もその価値は揺るぎません。嘘八百無しで全28曲必聴のバイブル的作品集です。中身はスペシャルティでのソウル・スターラーズ在籍時のゴスペル時代の56年作「Touch The Hem Of His Garment」からってのが最高です。幅広いファン層を獲得する契機となったポップスやR&Bへの転身後のキーン録音「I'll Come Running Back To You」に、No.1ヒットとなった「You Send Me」、「Wonderful World」。そして名実ともに大スターとなった59年からのRCA時代の5年間は全人類必聴の避けて通れない珠玉の名曲の嵐です。「Chain Gang」、「Cupid」、「Nothing Can Change This Love」、「Good Times」、「Twistin' The Night Away」、「Shake」、「Ain't That Good News」、「Bring It On Home To Me」、「Soothe Me」など書いたらキリがない程のクラシックがずらり並び圧巻の一語。よく録音していたスタンダード・カヴァーなどは省いた自作の主要曲が殆ど網羅されています。全編で聴ける、革命的であったともいえるレンジの広いメリスマ唱法は全てのソウル・ミュージックの基本といっても過言ではない魅力的なもんです。やはり最後を締めるのは歴史的傑作「A Change Is Gonna Come」。最初の一節“I was born by the river in a little tent”から涙を禁じえません。政治的な事は抜きにして、単純に素晴らしすぎる名曲集です。肌の色など関係なく全ての人がサムに讃辞を送るのが一発で分かる構成は見事です。
「“Change”を待ち続けたサムが残した無形文化遺産。押し付けは好きではないですが、全ての音楽ファンにとって必須!」
A Change Is Gonna Come
モスコ
Change